左右分離キーボード Kinesis Freestyle Edge 使用1ヶ月レビュー

Kinesis Freestyle Edgeという左右分離キーボードを使用し始めて1ヶ月ぐらい経ったので、経緯や感想など。

購入前

Realforce 91UDK-Gや中古で買ったLibertouchなどを使っている。昔は茶軸のMajestouchを使っていた。
基本的にずっとJIS配列。
使用環境はWindows 10と仮想環境上のArch Linux
ポインティングデバイスは親指トラックボール(MX ERGO)。

好みなど

  • キースイッチの打鍵感についてはLibertouchが一番好みで、Realforceも好み。茶軸もまあ良かった気がする。
  • スペースキーの左右の変換無変換キーをIME ON/OFFにマップするので、JIS配列が良い
    • MacのJISキーボード以外で採用されている、IME ON/OFFをトグル操作によって行うという操作方法は気が狂っていると考えている
  • 矢印キーは欲しい
  • F1-12キーはまあ使う、本体サイズも縦に多少大きい分には別に気にならないので独立キーが欲しい
  • PgUp,Home等はまあまあ使うが、キー組み合わせでもまあよい
  • テンキーは本体サイズが横長になるので邪魔、必要なら外部テンキーを左側に置いたほうがいい
  • 多少重いほうが安定するのでよい

購入まで

肩を開いてタイピングをしたい、キーボードの間にトラックボールを置けるという理由で、左右分離キーボードには前々から興味があった。

購入製品の候補

自作キーボード

近頃は自作キーボードも活発で、数々の設計やキットが出ているが、

  • そこそこ程度には耐久性のある製品が欲しいが、自分の組み立て精度を信用できない
  • キーの数だけ半田付けをしたくない
    • 最近は半田付け不要でスイッチの交換ができる製品が出てきているので、自作の場合も改善されていく?
  • それでも欲しくなるような、完成品が販売されていない左右分離キーボードの設計は見つからなかった

という理由から選択しなかった。
邪推であるが、小型のものを作りたいという理由の他に、自分で半田付けするので楽なように、また左右の基板を共通化したいという理由でキーの数が少ない設計になっている側面があるのではと勝手に思っている。

同じキーボードを2台

また、同じキーボードを2台買って並べるという選択肢もあり、

  • 静電容量式などの好みのキースイッチを選択できる
  • JIS配列を選びやすい
  • 分割の場合は左右に分割されたキーが、必ずしも自分が打鍵したい側の手に配置されているとは限らないが、2台の場合は当然どちらの手でも打鍵が可能

というメリットがあるが、

  • 場所を取る
  • 今更、今持っている旧モデルのRealforceをあまり買いたくない
    • 新モデルで買うとなると、狭額縁のRealforce R2のテンキーレスモデルとなり、2台買うとそこそこ高額となる

などのデメリットがあり、今回はやめた。
左右分離を買ってみたかったのもある。

左右分離型ではないエルゴノミクスキーボード

Microsoft等が出す手を出しやすいモデルから、Kinesis Advantage2等まであるが、
手を出しやすいモデルは薄めのメンブレンであまり好みではないしあまり肩を開けない、本格的なモデルは場所を取り高価という理由で今回はやめた。

市販品の左右分割キーボード

市販品の左右分割キーボードから選定した。
このスプレッドシートの製品リストが充実しており便利だった。 https://www.reddit.com/r/MechanicalKeyboards/comments/8eflpm/4_mechanical_ergonomic_split_keyboards_you_can/dxv1am4/

  • Kinesis社製品
    • Kinesis Freestyle2
      • この中の同社製品では最初に出た
      • 数ある左右分離キーボードの中では配列が一般的なUSキーボードに比較的近く、キーが多い
        • 差異としては、右側のキーが圧縮されて入れられている、左側にホットキーがある、Esc/F1キーの位置が異常
      • キーマップのカスタマイズはできず、Win版とMac版の製品がある
      • オプションにより、キーボードの横方向へのリフトが可能
      • メンブレン
    • Kinesis Freestyle Edge
      • 配列はFreestyle2と基本的に同様
      • キーマップのカスタマイズ性が高く、リマップやマクロなどが利用可能
        • レイアウトの複数保存とボタンによる切り替え、現在レイアウトのLED表示が可能
        • Fnキーによる一時的レイヤーの切り替えが可能
        • カスタマイズの幅については、SandSなどはできないため、QMKファームウェアほどではなさそう(QMKを使ったことはない)
        • カスタマイズが、Windows GUIアプリや、USBマスストレージとして見えるデバイス上のtxtファイルの編集、キーボード単体での操作 の3つの方法で可能
      • Kinesis Gamingというブランドから出ており、LEDがピカピカ光ったり、Windowsキーを簡単に無効にできたりする
        • LEDはオフにでき、その他に邪魔になるような点はないため、ゲーム以外でもとくに問題はない
      • Cherry MX 各種軸が選べる
      • オプションにより、キーボードの横方向へのリフトが可能
      • リストレストが標準で付属する
    • Kinesis Freestyle Pro
      • 配列はFreestyle2と基本的に同様
      • 最近出た製品
      • 製品仕様とマニュアルを見た感じでは、物自体はEdgeとほとんど同じで、ゲーミング向けピカピカ等を無くした感じに見えた
        • その分定価が安い
        • アクセサリのLift KitもEdgeと共通となっていた
      • Cherry MX 茶軸のみ
  • それ以外
    • MiSTEL BAROCCO MD600
      • 珍しくJIS配列がラインナップされている
      • F1-12,矢印,PgDn,Escなどがないコンパクトな配列
      • キーボード単体の操作によって、キーマップやマクロの設定が可能
        • PCからの設定は不可
      • Cherry MX 各種軸が選べる
      • 日本での入手性がよい
    • MiSTEL MD650L
      • MD600と同メーカーの新製品で、まだ発売されていない
      • MD600と比べ、矢印,PgDn,Esc等のキーが増えた
      • Cherry MXより背が低いスイッチを採用しているが、最近新しく出たCherry MX LowProfileスイッチではなく、昔からあるCherry MLスイッチを採用している
        • MLスイッチの評価はあまり高くなさそう
      • 日本代理店の取扱と、JIS配列の登場が期待される
    • Matias Ergo Pro
      • 配列が一般に比較的近いが、Kinesis Freestyleよりは独自寄り
      • ALPS互換メカニカルスイッチ
    • ErgoDox EZ
      • 凝った配列のやつ
        • 格子型配列
        • 親指で押せるキーが多い
      • 元々は自作キーボードであるが、ErgoDox EZなどでは組み立て済の製品を販売している
      • 標準から外れた配列系の中ではキー数が多いほうか
      • Cherry MX 各種軸が選べる
      • オプションにより、キーボードの横方向へのリフトが可能
    • Ultimate Hacking Keyboard
    • その他
      • 上のスプレッドシートにあるType=Assembled and Separated=Yes の製品は見たが、買えなかったり高かったりキー数が少なかったりした\

選定

考えていた事を適当に並べると、

  • MiSTEL BAROCCO
    • 店で触ってみた感じ、製品として品質は良さそう、左右がきれいに結合できるのも良い
    • 小さいことの良さはわかった
    • 今まで使ってきたJIS配列のため良さそうとは思った
    • しかしキーが少なく色々なキー組み合わせは必要となるので、従来との差異がそこまで少ないわけでもない
  • MiSTEL MD650L
    • BAOCCOよりキーが増えたのは良いがスイッチが不安
    • 薄いのは別に構わない
    • JIS版が出るまで待つとけっこうかかりそう
  • Kinesis Freestyle Edge/Pro
    • 一般的なキーボード配列との近さという意味で希有な製品
    • カスタマイズがしやすくてよさそう
    • Esc/F1キーの位置が意味不明
  • Matias Ergo Pro
    • 一応店で触った気がする
    • Kinesis Freestyle Edge/Proと比べて選ぶ理由が見つからず、レビューもあまり良くなかったのであまり見ていない
  • ErgoDox
    • 親指周りにキーが多くて便利そうだが、自分の手に合うかはよくわからない、たぶんいくつかは届かなさそう
    • F1-12キーなどがないのはマイナス
      • 余談だが、キーボードについて語るときに、F1-12キー(Fキー)をFnキーとうっかり呼ぶと、違うキーを指してしまうのが面倒くさい
    • 格子配列の良さには関心がある
    • 高機能なファームウェアに入れ替えられるのはよさそう
    • 最初に手を出すには標準から逸脱しすぎなような気もした
    • 価格も手は出せる範囲ではあるし、組み立て代行製品としては高くなさそうだが、まあ高め
  • その他
    • カニカルより静電容量式のほうが良いが、販売終了かつお高いμTRONキーボードぐらいしかなく現実的ではないので諦めた
      • RealforceかLibertouchが割れてほしい
      • 最近は東プレ以外の静電容量式キーボードが出始めているのでそのうち出るかなー
    • Cherry MXの中では、茶軸は以前使っており不満があるわけではなかったが、赤軸のほうがRealforceに近いと聞くし、音も茶軸より静かなので、赤軸を選んでみたい

などを考えており、Kinesis Freestyle Edge 赤軸が欲しいと漠然と思っていたところに、 Massdropによるセールが発生したので買った。

購入

Massdropより購入した。
以下のオプションを選択した、

Switch Option: Cherry MX Red 
Add-On Option #1: Lift Kit (Tenting with palm supports) (+$20.00)
Add-On Option #2: Palm Pads (+$10.00)
Add-On Option #3: No, thanks.

この選択で総額$199.99、それに加えてDHLの送料が$9.41、Massdrop初回購入のため割引が$10で、 合計$199.40、最終的にクレジットカードの7/31の為替レートで22,569円を支払った。

機能的にはKinesis Freestyle Proでも良かったが、本体価格・オプション価格ともにMassdropのEdgeが安かったため、Edgeを購入した。

8/29が出荷予定日のところ、実際には8/16に出荷されたので早かった。

購入後

設定など

  • パームレストとリフトキットは取り付けたが、パームパッドは買ってみたものの使ってない
  • 左右のスペースキーをそれぞれリマップできるため、右のスペースキーをFnシフトキー(押している間Fnレイヤーになる)にした
  • Fn+A/D/JでIME OFF、Fn+F/KでIME ONになるようにした
    • 実際には、他で使われないようなキーの組み合わせを送信するようにし、IMEの設定でもそのキーでON/OFFするようにしている
  • EscをF1キーに(右に)リマップ、以後もずらしてScrLkキーを潰すというリマップを試している
    • Fキーと数字キーの横位置が揃うのもよい
  • ペースト用にShift+Insボタンとか適当に作った

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良いところ

  • 肩が広がった(当初の目的)
  • 今のところ製品の品質にまったく問題は見当たらない
    • キートップの材質は、良いと言われているPBTではなくABSだが、油っぽくなることも今のところない
      • RealforceのPBTにはサラサラ感では劣る感覚はある
    • Cherry MXなのでキートップは交換可能
  • キーボード単体でリマップやマクロの設定が出来る
    • 突然左側にJキーが欲しくなった場合などにすぐに作れる
    • Vimのマクロのような感覚でキーマクロを設定することができる
  • GUIでも楽にカスタマイズできる
  • 間にトラックボールを置ける
  • 間にiPad Pro 10.5を置ける
  • Home等のキーが近いのは思ったよりも良い、間違えて押すこともほぼない
  • ケーブルの長さが調整可能

微妙なところ

  • IME ON/OFFの切り替えが面倒
    • ここはUSキーボード購入の最大の懸念点であり、対策のため設定に挙げたようなリマップが可能であることを条件としていた
    • 実際運用してみると、2キーの組み合わせですら、日本語配列の1キーによる組み合わせと比べると、明らかに面倒であると感じている
      • 対処としては1キーになんとか割り当てたいが、押しやすいキーが残っていない
        • 左右スペースキーをそれぞれ割り当てられたらよいが、スペースも多用するキーのため難しい
        • スペースキーをSandSにして、左右のShiftキーをON/OFFにするとか?
  • 赤軸が重い
    • カニカルスイッチは底打ちをしなくても反応するため、一般的な入力中は重いと感じることはないが、ゲームなどでキーを押したままにする場合や、複数キーの組み合わせを押す場合は、どうしても底打ちしたほうが安定しているため、底打ちが必要となり重く感じる
    • 茶軸の方が底打ちは軽くてよかった気がする
    • それ以外の打鍵感は良い
    • 赤軸を少し触るぐらいのことは何度もしているが、こういうのはしばらく使わないとわからん
  • 右手側にBキーが欲しかった
    • MiSTEL BAROCCOのように綺麗に左右を結合できるわけではないので、両側にあるキーがあってもいいと思う
  • たまに片手で適当に数文字程度入力したい時に、分割されているため手の移動距離が長くて不便
  • ケーブルは丈夫そうだが硬い

その他

  • US配列の記号やEnterのレイアウトは慣れてきたし、JISと併用しても問題なさそうだった
    • 変なキーボードに手を出すにあたって、USが使えないと選択肢が狭そうなのでまあ良かった
    • JISよりもUS配列のほうが記号配置が優れているかというと、完全に優れているというほどでもない気がする
  • 角度はどのぐらいがいいのかよくわからん

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という感じで、しばらく使っていく。
次はRealforceが割れてほしい!